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2015年9月

2015年9月27日 (日)

国勢調査の設問に違和感 「あなたは“正規”職員?」

 今回の国勢調査、回答もネットで可能になった。調査設問のひとつに「あなたは“正規”の職員か」というのがある。

 かねがね、“正規労働者”と“非正規労働者”とに働く者を区別するのには大きな違和感を持っていたのだが、国勢調査にまで使われるのにはちょっとおどろいた。

 雇用する側と雇われる側とが双務契約を取り交わして働く(雇用する)という本質においては正規も非正規も違いはなにもないはずなのだが、日本では新聞やマスコミでも身の回りの会話でもそうしたおかしな区分をすることがまかり通っている。違いと言えば労働条件の違いから雇用保険や年金などの社会保障制度の適応が両者で違うだけなのに。

 国勢調査の設問を見てみると“正規の職員”とはなにかとの説明に「一般職員や正社員など」とある。説明になっていない。一般職員の反義語は特殊職員だろうが、想像するに出社しなくても給与が出てる社長の愛人のこと?。 正社員の反義語は不正社員だろうから株主のコネで採用された社員のことか?

 私の理解では非正規労働には不法な雇用しか該当しないと思う。児童労働や強制(奴隷)労働、資格外労働などだ。

 強制(奴隷)労働は不当な因縁をつけて精神的に追い込んでいく手口を用いて、結果としてただで働かせるということが今もブラック企業で行われているようだし、アジアからの技術実習生などもパスポートを取り上げられるなどしてそうした被害を受けている。G7に名を連ねる国として恥ずかしい限りだ。詳しくはこちら

 どうも「非正規労働者」という呼称が一般的に用いられているのは世界でも日本ぐらいらしい。 参考リンクはこちら

2015年9月21日 (月)

安保関連法案が成立してしまったが・・・

 反対する世論の高まりにもかかわらず、国会多数派の力によって成立してしまった。

 安部政権は反対世論があっても、来年の参院選までには落ち着いてたいした影響はないと踏んでいるようだ。

 有権者も舐められたものだが、反対運動を担ってきた若い人たちの間では、「関連法案に賛成した議員を落選させよう」との動きが広がっているとのこと。

 老人としてもなにかできることをやらなくてはね。

 毎日新聞から記事をご紹介。

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安保関連法:強行成立 独裁、若者が止める 怒り、デモから選挙へ 思想家・内田樹さん

毎日新聞 2015年09月21日 東京朝刊 

 安全保障関連法が成立した。集団的自衛権の行使が認められ、自衛隊の海外での活動が拡大される。一方で法案に対しては学生らが反対の声を上げ、成 立後も全国で抗議活動は続く。法成立で今後の日本社会はどうなるのか、神戸女学院大名誉教授で思想家の内田樹さん(64)に聞いた。【聞き手・遠藤孝康】

 −−多くの国民が反対する中、政府・与党は採決を強行した。

 ◆国民が今一番感じているのは、「民主主義には欠点がある」ということでしょう。選挙で両院の多数派を占めれば、次の選挙まで、政権党はどんな政策でも強権的に実行できてしまう。政策が民意と離れていても、有権者には政権の暴走を止める手立てがない。

 私たちが忘れているのは「民主制と独裁は共生可能」という事実です。「独裁」の定義は「法の制定者と法の執行者が同一である」というものです。そ の反対概念は「民主制」ではなく、「法の制定者と執行者が別である」制度、「共和制」です。日本のように、立法府が事実上空洞化し、官邸が作った法律がほ とんど自動的に国会で承認されている状態は、形式的には「民主主義的」ですが「共和的」ではありません。

 首相は委員会で「早く質問しろよ」というやじを飛ばしました。この言葉は首相自身が国会審議を単なる「アリバイ作り」のセレモニーに過ぎないと 思っていることを露呈しました。法律を決めるのは官邸で、国会はそれを追認するだけなら、限りなく「独裁」に近い政体になっているということです。

 −−他国軍の後方支援など自衛隊の活動は大きく拡大する。

 ◆自衛隊員に後方支援の大義名分を納得させることができるでしょうか。大義名分を信じている兵士は強い。自分が何のためにそこにいるのか、その意 味を理解している兵士はどうしたらいいかわからない状況でも、「最適解」を選択できる。でも、自衛隊員が、たとえば中東で米国の始めた戦争の後方支援に送 られた場合、とっさの判断で最適解を選び取れるでしょうか。難しいと思います。大義名分がないからです。

 自衛隊員に死傷者が出れば、おそらく日本のメディアは死者を英霊にまつりあげるでしょう。そして、「派兵に大義はあったのか」という責任論を「死 者を犬死にさせる気か」というヒステリックな絶叫が黙らせることになるでしょう。米国のような言論の自由な国でさえ、9・11後は政権批判がほとんど不可能になりました。日本なら、その程度では済まないでしょう。

 −−学生の反対運動が全国に広がったことは、今後の政治にどんな影響を与えるのか。

 ◆運動が盛り上がってきたのは法案が衆院で強行採決された後でした。立憲政治の手続きが踏みにじられたことに対する怒りです。学生たちのスピーチ を聞いていると、彼らが心から怒っていることがわかる。切実さに胸を打たれます。安倍政権の人権抑圧的な政策がこのまま次々施行されるなら、若者にとって 耐え難く息苦しい社会になるということについて、彼らは身体的な違和感、恐怖感を感じていると思います。

 彼らは一法案についてだけではなく、民意をくみ上げ、異論との合意形成をはかることができなくなった今の政治システムそのものに対して「NO」と 言っています。「デモの次は選挙」になると思います。来夏の参院選に向かって、彼らは「安保法案に賛成した議員は全員落とす」という運動に転換していくで しょう。6月に選挙権年齢を18歳以上に下げる法改正が成立し、参院選から240万人の新有権者が登場します。安倍政権はこの集団の政治性を低く見積もっ ていたと思いますが、今は後悔しているはずです。この240万人に今一番影響力を持つ組織は、「SEALDs(シールズ)」だからです。

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 ■人物略歴

 ◇うちだ・たつる

 1950年東京都生まれ。東大文学部卒業。神戸女学院大教授を務め、2011年に退職。専門はフランス現代思想。著書は「街場の戦争論」など多数。武道家でもある。

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記事へのリンクはこちら

2015年9月16日 (水)

ブルーレイのロスレス音声が凄い

 AVシステムにサブウーファーを追加し、アンプも更新したのが昨年の夏。それ以来、以前にはスルーしていたハリウッド娯楽大作も視聴するようになった。どの作品を観れば良いのかあまりわからないので、アカデミーの音響編集賞にノミネートされたことのある作品の中から「宇宙戦争」選んでみた。もう10年も前の映画だ。

 原作は“H.G.ウェルズ”、監督がスピルバーグ、主演はトム・クルーズ。

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 借りてきたブルーレイディスクには“DTS-HD Master Audio5.1ch(ロスレス)”で音声が収録されている。

 さっそくに鑑賞してみる。家族の絆と宇宙人の侵略を絡ませたストーリーで、ハリウッドの娯楽作品としては標準。

 しかし音声にはびっくりした。とんでもないレベルの重低音が収録されていて手元のグラスがビリビリと共振する。サラウンド効果も充分。四方はもちろん頭上からも音がふりそそぐ。

 視聴中に素足の足元に風を感じたので、どこかの窓を閉め忘れているのかと思ったのだが、そうではなかった。再生の限界を超えた超低音がただの風となってウーファーから流れてきたのだ。よく壊れなかったものだ。

 ウーファーは1万円もせずに手に入れた中古品で、出力も100Wぐらいしかないのだが結構な実力があることがわかった。家庭用には充分だ。

2015年9月12日 (土)

インド映画「女神は二度微笑む」

 インド東部の都市“コルカタ(旧称カルカッタ)”はかつては黄金のベンガルと言われるほどに栄えて、詩人のタゴールや映画監督のサタジット・レイを生んだ街だ。

 私のような世代にとってはそうしたことよりもバックパッカーの聖地としての印象が強い。日本で海外渡航が自由化された1964年以降、幾人もの日本の若い旅行者が単身インドを目指してこの街に降り立った。その中にはこの街の持つ不思議な魅力に取り付かれてコルカタから抜け出せなくなり、ひたすら安宿街に沈殿して過ごす者も出てきた。

 まあ、コルカタで沈殿することはバックパッカー上級者の証だったわけだ。私と言えば、未だにインドには足を踏み入れたことがない軟弱者である。

 そのコルカタを舞台にした映画が“女神は二度微笑む”(原題Kahaani)、ミステリーとして上々の出来栄えだ。

 失踪した夫を探しにロンドンから来た妊婦が周囲を巻き込んで徐々に事件の真相に迫って行くという話なのだが、なかなかにストーリーが洗練されている。細部の描写も充分で、見ている方も異国の地であるコルカタに迷い込んだような気になってくる。話はやがて女神を讃える“プージャーの祭り”と徐々にシンクロしながらクライマックスを迎えていくことになる・・・・・・。

 コルカタの街が魅力的に描かれていて、街自体がもうひとつの主役となっている。ハリウッドでリメイクされることが決まっているらしいが、コルカタあってこその映画なので、果たしてうまくリメイクできるものなのか?お手並み拝見。

※日本語版の予告編はやたらと仰々しくて見苦しい。

※タクシーも警察車両も“TATA”しか出てこない。その方がインドらしいけどね。

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