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2020年9月

2020年9月13日 (日)

TVドキュメント「ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~」

 新聞の片隅の小さな記事に目が留まった。日本ジャーナリスト会議が北海道放送のTVドキュメンタリー番組に賞を贈ったとのこと。

 番組のタイトルは「ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~」。安倍首相の街頭演説にヤジを飛ばして強制排除されたあの事件を扱っているのだとわかった。新聞でさえ事件を掘り下げた続報が出なかったのに、ローカルテレビ局が特集番組を作っていたとは驚きだ。

 さっそく探してみると、YouTubeに北海道放送の公式チャンネルがあり、誰でも番組全編を見ることができるようになっている。

 これだけの労作を制作した当事者達には敬意を表する。北海道放送には許認可権をちらつかせた圧力に屈せずこれからも頑張って欲しい。

2020年9月 9日 (水)

富山へ小旅行

 台風が九州西海上を北上している最中、富山へ小旅行に出かけた。金沢より北へのドライブは数十年ぶり。

 富山市と言えば日本のコンパクトシティの先駆けとして有名。今回はその関連施設を見て回る視察旅行のようなものとなった。

 まずはJR駅から路面電車に乗って市立ガラス美術館へ。

 隅研吾設計の建物で、吹き抜けの空間が心地よい。図書館も併設されている。

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 展示スペースはコンパクトだけど、ちょうど特別展も開催中でなかなか楽しい体験だった。

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 駅前に一泊して翌日は富岩運河環水公園へ。公園は富山港への荷役ルートであった運河を改修したもの。ボードウォークがある水辺をレンガ色の建物が取り囲んでいて、アメリカの西海岸あたりにありそうな雰囲気の公園だ。

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 路面電車のネットワークも充実していて、福井市民からみると羨ましいような環境なのだが、平日のせいもあるのだろうけど街中の人通りはそれ程多くない。コンパクトシティは失敗したと指摘する人もいるようだ。(こちらこちら

2020年9月 4日 (金)

ドキュメンタリー映画「わたしはあなたのニグロではない」

 アメリカでSNSに投稿されて話題になったルールがある。それは投稿者である黒人青年が子供の頃に母親から躾けられたもので、外敵から自分の身を守るための術となっているものだ。

・手をポケットに入れてはいけない
・パーカーのフードをかぶってはいけない
・シャツを着ないまま、外に出てはいけない
・一緒にいる相手がどんな人か確認する。たとえ路上で会った人でも
・遅い時間まで外で出歩かない
・買わないものを触らない
・たとえガム一つだったとしても、何かを買ったらレシートかレジ袋なしで店を出 てはいけない
・誰かと言い争いをしているように見せてはいけない
・身分証明書なしに外に出てはいけない
・タンクトップを着て運転してはいけない
・ドゥーラグ(頭に巻く、スカーフのような布)をつけたまま運転してはいけない
・タンクトップ、もしくはドゥーラグを巻いて出かけたりしてはいけない
・大きな音楽をかけて車に乗ってはいけない
・白人の女性をじっと見てはいけない
・警察に職務質問されたら、反論してはいけない。協力的でありなさい
・警察に車を停止させられたら、ダッシュボードに両手を乗せて、運転免許証と登録証を出してもいいか尋ねなさい    
 ソースはこちら

 日本人にはちょっと想像力が及ばない世界にアメリカの黒人達は生きている。

 前置きが長くなりすぎたのだが、「わたしはあなたのニグロではない」は今でも連綿と続く黒人への暴力の構造と歴史を告発したドキュメンタリー。
 レジェンドとなっている黒人作家ボールドウィンの同名の原作を基に作られ、本人やマルコムX、マーチン・L・キングへのインタビューなど、当時の貴重な映像が監督の手で再構成される。半世紀も前になる過去の映像と現在の映像がオーバーラップする様が事の深刻さを浮かび上がらせる。

 映画のなかでのボールドウィンの言葉は鋭い。対峙する白人のTVキャスターは茫然として言葉を失う。映画を見終わった者は誰もがこの事実と無関係ではいられなくなるだろう。今を生きる者には必見と言って良い映画だ。

 あ、そうそう。サミュエル・L・ジャクソンってすばらしく美声だ。いつもはあの顔とのセットなので気が付かないのだが。

 映画の公式ページはこちら

2020年9月 1日 (火)

トム・ハンクス最新作“グレイハウンド”

 型落ちの4KTVが格安で出ていたものだから、ついつい購入してしまったのが半年前のこと。それ以来配信サービスをメインのソースとして映画を視聴している。
 購入したTVは韓国メーカーであるLGエレクトロニクス社製で、有機ELという自発光式のパネルを用いているもの。液晶とは動作原理が全く違い、ソースさえ良ければコントラストが高くて、奥行きが感じられる映像が得られる。つい最近になってソフトウェアのアップデートがありAppleTVが視聴できるようになった。

 チェックしてみると、トムハンクス主演の最新映画“グレイハウンド”がラインアップされている。予告編を見て気になっていたやつだ。料金は月額600円なのだが、7日間の無料お試し期間がある。アップル製品はこれまで一度も買ったとがないのだが、TVにはさっそく加入してみた。 

 その“グレイハウンド”、コロナに翻弄された不運の映画ということになる。当初は5月に劇場公開の予定だったものが、6月に延期され、ついにはアップルに買い取られて独占配信されることになってしまった。脚本も担当したトム・ハンクスは「悲しい」と言っているそうだ。

 出来の方はと言えばトム・ハンクスだけあって安定、安心の水準。戦争映画なのだけど話の舞台となるところがちょっと変わっていて、駆逐艦の艦内。潜水艦の艦内を舞台にした映画は多いのだが、駆逐艦内が舞台のものは私には初めて。
 時はアメリカが第二次世界大戦に参戦した初期の頃。場所は大西洋上。同盟国イギリスへ物資と兵員を運ぼうとする米輸送船団を巡り、船団を沈めようとするUボートと、護衛する米駆逐艦とが熾烈な戦闘を行う。トム・ハンクスはと言えばお察しのとおり艦長役。
 この映画が描くのは海戦のごく一部。ほとんどの場面が駆逐艦のブリッジ内部だし、Uボートはもちろん僚船の内部さえまったく出てこない。描く対象を絞り込み、余計なものは削ぎ落としているのだけど、こだわるべきところは細部まで丁寧に描写していく。そのことによって得られる臨場感と緊迫感がかなりすごい。結末は予想できてしまうのだけどスリリングなことでは一級品。

 これが実質無料だとは、なんだかトム・ハンクスに悪いような気が・・・。

 蛇足だが、艦内の食事風景に興味を引かれた。臨戦態勢にあっても将校の食事は陶磁器の食器でサーブされる。しかも、専任の給仕はプレスの効いた白い制服に身を包んでいる。

 そうした給仕達の一連の動作も簡潔だけど詳細に描写される。ストーリーの本筋とは直接関係ないのだが、そうした細部へのこだわりが作品のリアル感をぐっと高めている。脚本に書き込んだのはトム・ハンクスか?

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